翻訳

高品質な翻訳のために気を付けていること|ナレーション原稿英語翻訳

高品質な翻訳のために気を付けていること

こんにちは!翻訳家 / 日英バイリンガルナレーターの大山もも代です!
英日⇄日英翻訳をしたり、日本語と英語でナレーションを行なっています。

翻訳で大切にしていること3つ

私は翻訳をする際、以下の3点に気をつけています。

✔原文が伝えようとしている事柄を正確に理解し、深みを損なわない翻訳
✔表記を含め普遍的な表現を、公開されている公式文書を中心に確認
ネイティブチェッカーとのディスカッションと裏付け作業の上納品

それに加えて、各案件ごとに求められる雰囲気やテイストがありますので、クライアント様よりご希望を伺った上で、ぴったり合った翻訳をお届けしたいと考えています。

翻訳・英語ナレーション依頼

今回は、JAMSTEC(海洋研究開発機構)様からご依頼いただいたナレーション原稿翻訳をもとに、翻訳についての記事を書きたいと思います。

JAMSTEC様は文部科学省所管の国立研究開発法人ですので、CMや商品紹介などで求められるキャッチーな言葉選びではなく、しっかりとした印象を与える公的な言葉遣いを目指したいと思いました。

また、今回の映像は最新鋭の北極域研究船の紹介映像で、世界初の試みも多く登場するということで、その辺りもしっかりと印象に残るよう翻訳で際立たせたいと考えました。

ぜひ、実際の映像を見ながら本記事を読んでいただけますと幸いです。

「ドキュメンタリー」っぽいテイストで

トーンについては、今回クライアント様から「ドキュメンタリー」っぽくというご指定がありましたので、それを軸に翻訳していきました。

日本語原稿を見ていきましょう。

北極で今、何が起きているのか?地球の未来は、どうなるのか?
それを知るために、世界各国は北極域へ船を送り込み、研究を行ってきた。

この箇所にある、それを知るためにという表現。英語にするとTo answer the questionsで意味は通じますが、よりドキュメンタリー色を強くするため、To uncover this truth「この真実を解き明かすために」としました。全体の英語訳は↓です。

What is transpiring in the Arctic at this very moment? What is the future of our planet Earth?
To uncover this truth, countries around the world have been dispatching many research vessels to the Arctic region.

問題提起のための非常に重要な場面ですので、ドキュメンタリーのテイストを意識しつつも大袈裟にはならないよう、注意して翻訳しました。

単位記号を調べる

今回はナレーション原稿の翻訳だけでなく、字幕翻訳も行ったのですが、その際少し迷ったことがありました。

船の速さを表す単位「ノット」の表記を調べたところ、日本とイギリスでは “kt”と表記するようですが、国際的には“kn”とのこと。

ネイティブチェックを担当してくれているアメリカ人の翻訳者にも尋ねましたが、答えがわからなかったので、国立産業総合研究所が公開している国際単位系(SI)を調べました。正式な取り決めがないということで迷った結果、クライアント様に以下のようにお伝えしました。

大山もも代
大山もも代
船速のノットの単位記号について確認したところ海外では「kn」が一般的であるものの最新の国際単位系(SI)では取り決めがなく、一方日本国内では「kt」が計量法で定められているとのことでした。

今回海外向けの映像ということで「kn」を採用していますが、国立研究開発法人様の公式映像との視点から「kt」を採用すべきかご判断をお願いいたします。

迷ったときには調べられる方法を尽くして調べること、それでもわからなければ指示を仰ぐということを習慣にしています。

日本語でも知らない表現をどう訳す?

原稿にこんな箇所がありました。

全長128メートル、幅23メートル、総トン数1万3000トン。砕氷性能を示すポーラークラスは4相当で、 3.0ktの船速で平らな年氷、およそ 1.2mの厚さの連続砕氷が可能だ。「みらい」レベル、あるいはそれ以上の観測機能を併せ持つ。

ここで迷ったのは「一年氷」です。日本語でも初めて見た表現でしたが、調べたところ「一冬の間に成長した氷」ということがわかりました。英語にするときに“one year ice”“first year ice”、はたまた“first-year ice”か迷いましたが、それぞれ検索をかけてみて、英語圏の公的機関など一番しっかりとしているところが採用しており、且つ検索ボリュームも大きかった“first-year ice”を採用し、全文をこのようにしました。

With 128 meters in length and 23 meters in width, the new icebreaker boasts of a gross tonnage of 13,000 tons and is classified as a Polar Class 4, giving it the capability to continuously break flat, first-year ice with a thickness of about 1.2 meters at a cruising speed of 3.0 knots with the same or better observation capabilities as Mirai.

翻訳は言語力の高さはもちろんですが、検索能力と、どこまで裏付け作業を厭わないかという根性的なところも大きいような気がします。

私のような言葉大好き人間、言語オタクは大好きな作業ですが、そうじゃない方はきついかもしれません。

ナレーションのための翻訳

ナレーション原稿の翻訳は、通常の翻訳とはまた別の工夫が必要な場面があります。

英語の語順や構造は日本語と異なるため、一般的な翻訳では日本語映像との同期が難しいことがあるからです。

実際に、以前英語ナレーションの収録現場で、英語の原稿をそのまま読むと、1、2、3と順番に出てくるカットにどうしても合わず、急遽その場で私が翻訳し直したことがありました。きっと翻訳者の方がナレーションになるということを知らずに翻訳されたのだと思います。

そのため、私がナレーション原稿の英訳をする際は、上記のような工夫や裏付け作業に加え、「ナレーションのための翻訳」を意識して作業をしています。

つまり、映像中のカット切り替えやBGMの盛り上がりに合わせて違和感のないように語順を入れ替えたり、尺に合った単語選びをするなどです。通常の翻訳会社にはない工夫だと思っており、ナレーター兼翻訳家である私にこそ安心してお任せいただける部分だと自負しています。

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